○横山 美和 (東京大学大学院工学系研究科)、堀 浩一 (東京大学先端科学技術研究センター)
メディアのディジタル化によって, アナログ時代は別々であったメディアが融合し, これまでにはない表現や流通を可能とした一方で, このようなハード面での急速な進展に対して, ソフト面でのコンテンツに対する供給不足が懸念されつつある. そのため, これまでに制作したコンテンツ資産の活用方法に期待が集まっている.
2000年に開始されたディジタル放送到来による多チャンネル化, ネットワークを利用した広帯域化によるブロードバンド放送等の本格化は, 慢性的なコンテンツ不足とそれらを制作する人員不足, 時間不足を招くこととなった.
従って, コンテンツに対する「アセットマネジメント」といった考え方が必要とされる. そのような経緯の中で, 近年, 放送業界ではこれまでに制作したコンテンツ資産の再利用が映像業界を中心に行われ, そのための制作技術や研究も盛んに行われるようになった. しかしながら, これらの技術や研究はすぐさま利用可能なようにコンテンツをモジュール化し素材を提供する, あるいはその素材を検索するといったことで制作を支援する, 販売するといった二次的なコンテンツ活用の試みが多く, その内容や制作者の創造過程まで踏み込み支援するといった試みは未だ発展途上の段階にある.
本論文ではラジオ制作を対象として, これまで蓄積してきた台本や記録を「知識資産」と捉え, それらを分析しその基礎的な構造を明るみにした上で, 堀らの提言する「知識の液状化と結晶化」の方法論 (Knowledge Liquidization & Crystallization)を用い, 今後の放送文化にも貢献するような計算機によるラジオ番組制作のための番組企画支援方法を提案する.