【講演概要】

論理・ロゴス・レゲイン・感性 ――言葉の根源

斧谷 彌守一
(甲南大学人間科学研究所)



ジャック・ラカンは「愛は陽を受けて笑う小石」という表現が 「最も優れた愛の定義」である、と言っている。なぜ、そのように言えるのだろう。 むしろ、「個人の立場や利害にとらわれず、 広く身のまわりのものすべての存在価値を認め、最大限に尊重して行きたいと願う、 人間本来の暖かな心情」 (『新明解国語辞典』第5版) のような言い方の方が、 はるかに「愛」の「定義」に近く、「論理」的ではないのか。「論理」に近い語に、 「理性」という語がある。ハイデガーによれば、ドイツ語で「理性」を言い表す語 「Vernunft」は、根本的には「聞き取ること」である、という。 「聞き取ること」という概念は、「理性」より、むしろ「感性」と親和性があるのではないのか。 このような疑義を念頭に置きつつ、主にハイデガーの言語論に拠って、 言葉の根本的様態について考えてみたい。