【講演概要】

歌舞伎その他に見る物語の重層性について

小方 孝 (岩手県立大学ソフトウェア情報学部)



歌舞伎は伝統的な上演芸術の一ジャンルであると同時に、ドラマ、舞踊、 音楽等様々な要素を含む、現代的な芸術としての多くの特徴をも持っている。 その分析や研究は、デジタルな物語生成の研究・設計・開発に貢献するだろう。 筆者はこれまで多重物語構造モデルの観点から歌舞伎の物語構造の調査と分析を行って来た。 特にその創造、受容、流通過程を含む生成あるいは産出を目的とした研究を行って来た。 歌舞伎の多重物語構造モデルは、 歌舞伎の全体構造が関連する情報の多重的な使用を通じて構築されることを意味する。 例えば、歌舞伎において「人物」という要素は次の三者―物語作品内の 「登場人物」、その上演史を持ちまたある芸名を持つ俳優、 本名を持つ現実の人間に分かれる。この多重性は人物に多重的で深い特質を提供する。 従来の研究に基づき、歌舞伎分析をシステム設計に橋渡しする方法を議論するが、 その際次の二種の物語生成システム―統合物語生成システム及び芸能情報システムを利用する。 本稿ではまた、歌舞伎とその以上のような特性を取り上げるが、同時に物語そのものが持つ多重性・重層性という観点からの一般化を図りながら、議論を試みる。