両角 清隆 (東北工業大学 工業意匠学科)
“ことばのデザイン”を,デザインにおける “ことば ”の役割から検討する。 そのため,情報アクセス支援ツール“Knowledge Board” の研究開発における次の二つの事例を取り上げる。1)開発プロセスにおける “ことば (キーワード)”の果たした役割
2)ユーザーインターフェイスデザインにおける “ことば ”の重要性について1)デザイン開発プロセスにおける“ことば”
まず,デザイン開発プロセスにおけることばの役割, 特にコンセプト検討におけることばの重要性について述べる。
Knowledge Boardの研究開発では,ユーザーの居室を訪問しインタビュー調査を行なった。 情報処理プロセスに関する多くのデータを集めることが出来たが, それを集めただけではコンセプトは決まらなかった。 開発メンバーによる話し合いの中で有効だったのは, ユーザーが行なう情報処理の図化と“キーワード”であった。 情報処理プロセスの中のどの部分に焦点を当てるべきかという検討の中で, “情報の自分”というキーワードが開発上のブレークスルーになった。 コンセプトを,一言の“ことば(キーワード)”に集約することによって開発の目標がはっきりした。2)ユーザーインターフェイスにおけることば
機能に適切な“ことば”を付ける事で,ユーザーはツール・システムを適切に使うことができる。 この時,ユーザーの経験に基づいて“ことば”を決めることが望ましい。 ただ,実際にこのデザインプロセスを実施することにはいくつかの難しさが伴う。 ことばは生きているもの・変わっていくものであり,また理解は状況依存的であるので, どのようなユーザーのどのような場面での知識に対応させるのかといった場合分けをして, ことばを決めるのかは大変難しい。 また,新しい概念を表現することは難しい。例えば,Knowledge Boardで使用した “情報についての情報”という意味で使用した“メタ情報”ということばを, ユーザーが直感的に理解することは難しい。 こうした問題に有効なのは循環的開発プロセスであり, 仮説を立てシミュレーションモデル等を作成してユーザー参加型の検証を行ない, さらに改良していくことが有効である。