【講演概要】

ミスコミュニケーションに関する基礎研究(3)
−顔文字は誤解の防止に有効か?−

○岩原 昭彦 (樟蔭東女子短期大学), 八田 武志 (名古屋大学大学院環境学研究科), 猿橋 昌 (日本電気株式会社)



近年,ブロードバンドなどの情報通信インフラが整備され, 電子通信機器が技術的に発展したことにより,インターネットの利用が急速に普及してきた。 それに伴い,Eメールや携帯メール,ブログ,インスタントメッセージなどのCMCも日常化しつつある。 CMCは新しいコミュニケーションの形態として様々な可能性を秘めているが, 一方で,CMC上での討論や相談は,実際に対面しての討論や相談に比べて成功しにくく, 容易に決裂し,ケンカ別れに終わるなど禍根を残しやすいことが指摘されている。 CMCでこのような問題が生じるのは,表情などの非言語的情報が伝達されにくいことだけに限られるものではない。 音声言語によるコミュニケーションでは,単語や文法による象徴的意味情報に加え, プロソディー情報によって感情的意味情報が加算されたものが伝達される。 それに対し,Eメールや携帯メールによるコミュニケーションは文字言語に依存しており, プロソディー情報が伝達されにくい。しかしながら, 実際には,マンガなどの吹き出しでは様々な活字体が用いられることで, 感情的意味情報が伝達されている。 CMCにおいては,顔文字や絵文字を用いることで,感情的意味情報の付加が行われているが, これらのことは文字言語においても感情伝達が可能であることを示唆している。 そこで本研究では,身近なコミュニケーション・ツールの一つになっているにも関わらず, ミスコミュニケーションが生じやすいとされる携帯メールにおいて, 感情的意味情報を付加するためによく用いられているemoticon(顔文字や絵文字)が, ミスコミュニケーションの発生や低減にどのような影響を及ぼすのかを心理実験により検討する。