【講演概要】

文学的感性とコンピュータ

岩垣 守彦



出版される「文学作品」は編集者の内容チェック, 出版社の売り上げチェックなどを受けて人々に提示されてきた. 編集者と出版社という感性のチェック機関で作品が選択されたのである. しかし,今では,インターネットを通して, 誰のチェックも受けずに誰でも人々に自分の作品を自由に提示することが出来る. 編集者と出版社の評価選択を受けることなく,直接人々が評価選択することになったのである. 文学作品を挟んで作者と読者の関係が近くなった, あるいは直接的になったということである. それで文学作品と作者と読者の基本的な構図が変わったわけではないが, 作品を文学であるかどうか判断・評価するのは読者の文学的感性であるという基本的な事項が, 何時の時代よりも明瞭になったように思われる.