岩垣 守彦
和歌・短歌には「物語」を暗示させるものが多い。昔、 芝居の勉強をしているときに、ふと、 「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき」 (猿丸太夫・古今)をいう歌の事象配列が気になった。 この歌は「秋は悲しき」と作者が言ってしまっているところが不満であったが、 情を刺激するのは事象と事象の出し方にあると気づかされた。 「あることをした[奥山に紅葉踏み分け]ら随伴的に事件 [鳴く鹿の声]が起こった。それで随伴動作[聞くときぞ]と随伴事件[間(ま)] が起きて結末[秋は悲しき]」があったという展開になっている。 この随伴的展開は万国共通のようで、作詞やシナリオなどで使われている。 この展開を考察し、物語(心を動かすもの)を創ってみたい。