北野 正樹、石川 勉 (拓殖大学工学部情報工学科)
我々は,“言葉を理解し,言葉で考え,言葉で答える” コンピュータの実現という目標を設定し研究を進めている. 本論文では, このコンピュータの一つの核となるべき言葉ベースの知識表現法とその推論法について提案する. 本知識表現法は,一種の拡張型述語論理形式であり,単文, 複文に係わらず一つの自然言語文は一つの述語式で表現される. 複文の場合は主節が述語式の基本を構成し, 従属節は述語部あるいは引数部に埋め込まれて表現される. さらに従属節も述語式を使って表現されるため再帰構造を持った表現形式である.
一方,推論法としては, 基本的にはC.Beierle等による拡張型の順序ソート論理の枠組みを用いる. 具体的には,言葉(概念)で表された引数部をソート付の定数あるいは変数とみなして処理する. ただし,上記手法ではソートを一つの概念として扱っているが, 本論文で提案する知識表現法では述語部や引数部が複雑な構造となり複合的な概念となるため, それに適合した推論処理法を提案する.さらに,推論処理の効率化のため, 意味的な包摂関係を積極的に利用可能なよう推論規則の改良を図る.