林 侑輝 (千葉大学融合理工学府/国立国語研究所研究系日本語教育研究領域)
最近、メディアでおとなの発達障害がよく取り上げられている。 敢えて「おとなの」と冠するのは、 発達障害が子ども時代には見落とされがちで、 大人になってから発覚・自覚する場合が多いことを示しており、 当事者やその周りの人々が適切に問題化できるかが問われている。 そもそも発達障害の対象となる症状は多様である上、 当時者本人の生活や行動、生い立ちなどが関与するため、 診断・対処のいずれの場面においても当事者の語りが鍵となる。 本稿では、心療内科で発達障害と診断された患者の手記を手掛かりに、 本人のことばが医師に伝わらなかった場合と伝えらなかった場合を取り上げ、 その要因を探る。本研究は、患者本人が適切に言語化できることと、 医師側が患者の不完全な語りを適切に理解できることを目標とするものであり、 軽度認知障害の診断や子どもの学習支援への応用まで視野に入れている。keywords: 発達障害,ナラティブ・ベイスド・メディスン (NBM),SOAP 形式での記録・分析