【講演概要】

物語言説における時間順序変換機構へのコネクタの導入及び言語表現へのその反映の構成的検討

○秋元 泰介 (電気通信大学)、小方 孝 (岩手県立大学)



物語論では、物語における「何を語るか」と「如何に語るか」という二つの側面が区別され、 前者は物語内容、後者は物語言説と呼ばれる。 本稿では、物語生成システムの観点から、物語言説における「時間順序」 の変換方法、さらにそれを反映した言語表現の生成方法を検討する。 時間順序とは、物語内容における事象の生起順序と、 物語言説においてそれが語られる順序との関係を意味する。 筆者らは以前から時間順序変換を、 物語内容構造から物語言説構造への変換処理として位置付けてきた。 一方、深層的な構造処理だけでなく、表層表現においても、 時間順序構造を受け手が理解できるような形で表現するための処理が必要になる。 今回は、時間順序変換の問題について、言説構造の処理方法の再考に加えて、 それを言語表現の生成にも結び付ける。具体的には、 時間的に離れた二つの事象 (列) を結び付ける「コネクタ」という構造的要素を新たに導入する。 これは、意味的関係、時間的関係、結合方法、 結合順序という下位要素からなる。そして、それに基づいて構造変換を制御し、 さらにその情報に基づいて言語表現の生成(時間表現の付加、 動詞語尾の変形、事象文の名詞句化等)を行うという方法を提案する。 また試作を通じてこの方法の具体化や課題の検討を行う。