不完全な知識について


不完全な知識に就いては以下に示すような体系が考えられる。

  1. 知識に誤っているかも知れないというラベルがついている
    仮説推論などでは、知識を仮説と事実に分け、仮説を不完全な知識とみる。 仮説に関しては矛盾が起こる可能性があるという意味で不完全である。 この場合の仮説とは実は、abduceされるべき知識である。前節で言及したよう に、仮説推論等では abduceすべき知識を含む知識に仮説集合という枠を与えている。 Theorist [Poole 1987]等の論理に基づく仮説推論では得られた 仮説の正当性は論理的には保証される。
  2. 知識の正確さに尺度がついている
    Probablistic Reasoning [Pearl 1988]などで、 知識に確からしさの尺度がついている。確からし さが 1.0 ではない知識は完全に正しいわけではないという点で不完全である。 しかし、この場合の知識は abduce された ものではなく、確率的に生起するというものである。
    一方、ε-semantics を用いることにより、確率と論理を結び付けることが出来る。 abductionに於いて Cost-based abduction [Charniak 1994]や Probabilistic Horn abduction [Poole 1993a, 1993b]も確率を導入している が、これは、 良い仮説を選定するための重み (cost) のようなものなので、尺度とは意味が違う。
  3. 知識が欠如している
    推論に必要な知識が知識ベースに欠如している。従って、なんらかの 手段で知識を補間しないといけない。 推論に必要な知識がないという意味で不完全である。 補間されるべき知識は結局は1.に於ける仮説集合に等しいが、最初に 仮説集合という枠を与えていない。 従って、得られた仮説の正当性等の判断は難しい場合もある。 CMS [Reiter 1987] の導き出す仮説はこれに当たると考えてよい。
本研究で扱おうとしている知識が不完全であるとは、3.の 意味での不完全さである。 つまり、 本論文に示す不完全知識を扱う推論は 欠けている知識をabduceする推論であり、欠けている知識を analogical mappingなどにより既存の知識から創り出すことである。これにより、 知識の創造が可 能になるが、仮説の自由度が大きく、正当性の判断が難しいため、 以下の如く 少し不完全さの拘束を緩める。
  1. 知識が欠如しているが、代用の知識がある
    必要な知識が全く欠如し ているのではなく、欠如している知識に対応する類似知識が存在する 可能性がある。 つまり、1.のように仮説集合として明示的に与えるのではなく、なんらかの非 明示的知識があって、それにabduceすべき知識から写像出来るとし、 その知識を代用する。
    この場合、知識ベースにある知識を使うので、新たな知識の創造ではないが、 その知識の使い方に関しては創造的な使い方を行うことになる。この場合、 写像により得られた知識は元の知識ベースの中の知識に誤りがないという前提 を与えると 正当性は保証される。しかし、仮説の使い方の正当 性は類似のとり方に依存する。
    更に、この写像により得られた知識をabduceすべき知識の存在する 領域に逆写像すると3.の意味での 仮説と等価な仮説が得られ、しかも、正当性は類似のとり方が正しい場合は、 保証されるし、仮説の coherence も保たれる。
尚、詳しい説明は省くが、代用の知識に写像出来た時点で3.の意味の知識をabduceしたことになる。

References: